私も半年前までは
毎朝走っていたわけ
ではない。
気が向いた時だけ。
辛い修行みたいだし、
そもそも、忙しくて
走る時間がなかった。
自分に確認したが、
自分もそう言っていた。
しかし、昨年11月、
NYシティーマラソンに
ボランティアとして
参加したときのこと。
楽しそうに走る人
苦しそうに走る人、
多種多様だったが、
ゴールめがけてみんな
同じ方向に走っていた。
大事な休日の朝を
費やして、そもそも
「なんで人は走るのだろう」
という疑問がわいてきた。
そして、どうせなら著名な方が
考える「走ること」の意義を
知りたいと思い、
この本を手にする。
最初に言っておくが、
本著は健康法としての
「走ること」について
書かれた本ではない。
世界的な作家村上春樹さんが
捉える「走ること」の意味を
哲学的に再定義されており、
自らの体験を通して、海外での
マラソン大会への準備、そして
日常の出来事も織り交ぜながら
自分との対話を坦々と記録したもので、
とても読みやすい内容だった。
私もこの本を読むまでは、
走ることはいいことだと
頭ではわかっていた。
しかし、言語化できておらず
モヤモヤしてる部分が多分にあった。
周りを見渡すと
忙しい人ほど走っており、
まるで走れば走るほど
仕事ができるようにも見える。
身体的なメリットより、
精神的なものの方が
大きいのではないかとも
思えてくる。
村上さんは、とにかく毎日走ることを
大事にしており、仕事をするために
あえて走っている、と断言している。
そして、忙しいときこそ走ることに
さらにこだわり、面白くないことが
あったときはいつもより少しだけ
長い距離を走ることにしているそうだ。
毎日1時間ばかり走り、
そこに自分だけの沈黙の時間を
確保する作業。それが精神衛生に
とって重要な意味を持つ行為で、
マインドフルネス的な瞑想みたいな
ものなのだろう。
走ることを人生の縮図と捉え
多くのことを毎朝走ることから学び、
よりよい仕事をするために
毎日「走り」続ける。
自分も当てはまることが多く
背中を押してほしい部分だったので、
私も半年前から毎日走ることは
すぐに習慣にすることができた。
毎朝のモーニングルーティンを
半年続けてみての感想は、
気が向いたときだけ走っていたときより
毎日走っている方が迷いも少なく、
時間効率も格段と上がっているということ。
ここまで自分の精神面に与える
プラスの影響が大きいのなら、
毎朝5kmを年末までは続けて、
来年からは毎日10km走れるように
体も調整していこうと決意をあらたにした。
走ることに慣れてくると、
誰もが一度は考える
「走ること」の意義。
何か言語化したものを
読みたくなったら、本著は
最良の一冊と言えるだろう。
一人の作家の人生を
通して、「走ること」を哲学的に
紐解いてくれている。